以下の文章は、北岡泰典のメルマガ「旧編 新・これが本物の NLP だ!」第 30 号 (2005.3.27 刊) からの抜粋引用です。

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NLP 共同創始者ジョン グリンダー氏が先週初来日され、3 月 21 日、東京ビッグ サイトで共同トレーナーのカルメン ボスティック サンクレア女史とともにビジネス向けワークショップ、「NLPリーダーシップで才能を開花させよ」を開講されました。

ワークショップの参加者総数は 150 名以上で、そのバックグランドも多岐に渡っていたようで、グリンダー氏の独特のワーク スタイルが日本の「NLP ピア」の方々に初めて紹介される機会となりました。

今回は、グリンダー氏のワークショップの内容ごく簡単に概要説明しますが、何点か、その前に、私の方からお伝えしておくべきことがあります。

1. 本ワークショップには、国内外の NLP トレーナーをはじめ、著名な方々にも多数参加していただきました。これにより、イベントは、非常に盛大なものになりました。まず、この点について、イベント主催者を代表して、ワークショップ参加者のすべての方々に心から感謝の念をお伝えしたいと思います。また、そうした方々の中には、今回のグリンダー氏のワークショップの内容が初歩的に過ぎると感じられた方もいらっしゃったことを理解しています。そうした参加者の方々の「満足度」が低くなってしまったことに関しては、 私は心から陳謝いたします。

これは、私たち主催者側は、グリンダー氏のこのワークショップを「まだほとんど開拓されていないと言える日本のビジネス界における NLP 市場の開発の手段」と位置づけてきて、イベントのタイトルにも「ビジネス向けワークショップ」という冠を付けさせていただいていましたが、結果的には、参加者の大部分は NLP 団体関係者を始め、NLP ピアが多数占めたのですが、この事実を主催者側が把握するのが遅れ、このため、ワークショップ内容を NLP ピア向けに適切に急遽変更することも遅れてしまったからでした。もしこの事実に主催者側が適切に対応できていたとしたら、たとえば、午前中の演習内容等はまったく異なったものになっていたはずです。

この主催者側の不手際に関しましては、改めて陳謝いたします。また、今後の反省材料にしたいとも思っています。

2. そういう主催者側の不手際にもかかわらず、グリンダー氏自身は、ワークショップ参加者の皆さんのすばらしいエネルギーを感じ、ぜひ来年も再来日して、皆さんが望んでおられた新コード NLP をさらに詳細にお伝えしたい、という思いでいらっしゃいました。同氏は、団体の枠組みに捉われず、他の団体の方々も積極的に参加できるようなトレーニング プログラムの開講を考えていらっしゃいます。

3. 私は、イベントの開始時のスピーチで、「国内の NLP 団体の統合的活動」を訴えましたが、この言質とイベントの最後に私が「私の団体名が『英国 NLP 学院』から『グリンダー & ボスティック提携 日本 NLP 学院』 (仮称) に変更され、お二人の団体の『日本支部』となります」と発表したことに、矛盾がある、と思われた方々がいたようです。

ここには、その方々の誤解があったようです。私の最初の言質の意図は、上記のグリンダー氏の姿勢も反映した上で、「まだほぼ処女地のように思える『無尽蔵の対外市場』を国内の NLP 団体の方々で力を合わせて協力してどんどん相乗効果的に新規に開拓していきましょう」ということでした。その一方で、私の団体がもしかりに (私が 18 年以上おつきあいがあり、今でも NLP 業界内では非常に重要な VIP の方であると私が見なさせていただいている) グリンダー氏の団体の「傘下」に入るとしたら、それは、NLP を学ぼうと思われる方々にとって国内の NLP 界が「無選択肢状態」からちゃんと多岐に渡る選択肢が存在するようになることを意味し、かつ、国内の各団体間で相互のレベル向上を目指して建設的な競い合いがあってほしい、と私が望んでいるからでした。それゆえ、これらの二つの私の言質はまったく矛盾しない、と申し上げる必要があるか、と思います。つまり、「国内の NLP 団体の方々がこれから力を合わせて協力して開拓すべき」ものは、すでに大きさが限定されている小さなパイではなく、むしろ無尽蔵の対外的市場であることを、私は意味しました。

ちなみに、すべての NLP 団体を 1 つの組織が統括するというシステムは、英国では 20 年近くにわたって非常に成功裏に維持されてきています。このため、「英国 NLP 協会」が世界で最大の NLP 組織になっています。日本でも、このような組織構築は不可能なはずはないと私は思っています。必ずしも私の団体がその統括組織である必要はないと思いますが、もし仮に国内の他の NLP の団体の方々もそのような国内の NLP 統括組織のアイデアを良案と思われるようであれば、うれしく思います。このような話を、私がイベントで、具体的に提案すべきだったのでしょうが、私は、あの場ではあくまでも私は「黒子」でしたので、また、時間的な制限もあったので、「舌足らず」の表現で終わってしまいました。

4. 上記 2. の項目についても関連することですが、私の近くにいる人からときどき、「北岡先生は、(プリゼンがあまりうまくないので) 誤解されることが多いことが残念です。コーチングの平本先生 (ところで同氏を私はよく存じ上げていますが) の寝袋の美談のような、障害を抱えて生きてきたことや苦労した話をもっと自己開示してください」 と助言されることがあります。

私自身、このような過去の経歴は「コンテンツ」とみなし、コンテンツフリーの NLP には馴染まないと思うので、あまり話をしませんが、しかしもしその自己開示 (「カミング アウト」というべきものでしょうが) で、さらに皆さんとの距離が縮み、私がどういう人間であるかについての理解が深まるようでしたら、どのように過去に NLP が私の人生を決定的に変え、私に真の意味での「人間革命」をもたらせたか、について言及することはやぶさかではありません。

本メルマガの次号以降で、この作業を行いたいと思っています。

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以下、 ジョン グリンダー氏とカルメン ボスティック サンクレア女史のワークショップ、「NLPリーダーシップで才能を開花させよ」の内容の概要報告と私のコメントを記します。

本ワークショップは、「1. モデリング」、「2. 意思伝達パッケージ」、「3. 多重知覚ポジション」、「4. 新コード変化フォーマット」の 4 つの主要セクションに分かれていました。

1. モデリング

本ワークショップでは、まず、グリンダー氏が「NLP の真髄」としての「モデリング」についての説明を行いました。

私は、グリンダー氏の左脳的認識論的説明に関しては、約 20 年間敬服し続けてきていますが、30 年前の NLP 創始以来、直感的な「口で説明する必要はなく、ただ体 (右脳) で体験するだけでいい」といった「バンドラー派」系の NLP に慣れ親しんでこられてきていた国内の NLP ピアの方々にとっては、同氏のワーク スタイルは非常に大きな驚きだったのではないでしょうか? 私自身、グリンダー氏の資格コースに参加したときは、通算 30 日間も、あの調子のプリゼンを同氏から聞き続け、「ベイツン風」の認識論的講義に酔いしれた記憶があります。

また、ワークショップ参加者の方々は、バンドラー氏の右脳的ワークとグリンダー氏の左脳的ワークが「核融合」的に有機的に交わらなければ、そもそも NLP は生まれえなかったであろう事実にも、少なくとも直感的に気づかれたのではないでしょうか?

グリンダー氏の言う「NLP の真髄としてのモデリング」は、私が「大文字のモデリング (すなわち、無意識的モデリング)」と「小文字のモデリング (意識的モデリング)」と定義するうちの前者 (Modeling) のことですが、グリンダー氏は、このモデリングには、以下の 5 つの手順があることを話されました。

1. 適切なモデル (パターン化の対象) の特定とアクセス確保
2. モデルのパターン化の「無意識的理解」 (いわゆる「DTI」のことです)
3. パフォーマンス基準が満たされるまでのパターン化の体系的展開
4. パターン化の対象者および自分自身に存在するようになったパターン化のコード化
5. コード化したパターン化を効果的な形で伝達できるかどうかのモデルのテスト

私は、「バンドラーとグリンダーの (大文字の) モデリング過程をモデリングした手順はないのですか?」と よく聞かれ、その作業は、個々人に任されている、と答えてきていましたが、その答えが上記の 5 手順ではないでしょうか? 確かに、この手順は、グリンダー氏の自己分析であり、かつ手順内容自体がまだ「荒削り」の感もあるとも思われないことはないですが、さらに洗練された「モデリングのモデリング (= 「メタモデリング」) 手順を構築するための非常に重要な基盤となる分析モデルだと、私は思います。

グリンダー氏のプリゼンテーションの後、質疑応答セッションが設けられました。モデリングについての非常に興味深い質問がいくつか尋ねられ、グリンダー氏の回答が与えられました。

2. 意思伝達パッケージ

冒頭の「モデリング」に関する講義の後、グリンダー氏は、ビジネスの生命線としての情報引き出しのテクニックとして、「フレーム」、「限定 (具体化) 質問」、「確認手順」、の「意思伝達パッケージ」の 3 段階モデルを提示されました。

このうち、フレームは、情報引き出し時の、文脈特定のことです。

また、限定質問は、NLP 創始時の最初の NLP テクニックである 十数個の「メタモデル質問」を「名刺限定」の「特にどの~ですか?」と「「動詞限定」の「特にどのように~するのですか?」の二つの質問に還元したものです。

さらに、確認手順では、情報の受け手が「言い換え」を行い、情報が正しく伝達されたかが確認されます。

このグリンダー氏の説明の後、意思伝達パッケージ (あるいは、「口頭パッケージ」) の演習がワークショップ参加者の皆さんで実践されました。

本メルマガの冒頭でも示唆しましたが、 参加者の皆さんは上級 NLP ピアが多かったので、場合によっては、この演習を割愛することも可能であった、と私は、現在考えています。

3. 多重知覚ポジション

その後、お昼休みとなり、午後は、カルメン ボスティック サンクレア女史がワークショップに来られて、彼女の「多重知覚ポジション」に関するセッションが始まりました。

彼女は、自分の経歴に関連した比喩を語りましたが、その中には「知覚ポジション」の意味合いがちりばめられていました。

多重知覚ポジション関連演習としては、「無人島に遭難したときに水晶玉はどう役にたつか」といった知覚ポジションに応じて特定の物の意味合いがどのように変化するか、ということに関する体験演習と、適当な長さに切った編み物紐を使って、数人のグループ単位でどのような創造的なプリゼンテーションができるかのグループ演習がなされました。

二番目の演習については、皆さんに実際にグループ単位でプリゼンテーションをしていただきましたが、操り人形とミラーリングを組み合わせた演習発表や星印の真ん中にいる人に向かって周りを回転している人々が多重トランス誘導する演習発表等、すばらしいプリゼンテーションが続きました。

後ほど、ボスティック女史とグリンダー氏は、世界中各国を回って同じような演習をワークショップ参加者にしてもらっているが、編み物紐といった簡単な題材を使ってこれほどクリエイティブなワークをプリゼンできる国民に会ったことがない、日本人は創造的でない、と言われているようだが、この演習に関しては最も創造的であることがわかった、と私に対しておっしゃっていました。

おそらく、日本人の方々は、幼児の頃同様な遊び (すなわち「あやとり」) をしたことがあるのかもしれない、また、ある安全な文脈の中では眠っている創造性が全開するのかもしれない、といった推測をお二人はしているようでした。

4. 新コード変化フォーマット

この最後のセクションでは、新コード変化フォーマットを使って高パフォーマンスを引き出す、アルファベット表を使った「新コード ゲーム」演習が行われる予定でしたが、この時点で、「もっと質疑応答の時間がほしい」というワークショップ参加者から間接的に伝えられた要望にそう形で、グリンダー氏は、同演習は割愛して、参加者との質疑応答のために残りの時間を使いました。

ここでも、非常に興味深いモデリングに関する質疑応答が繰り返されましたが、一点、グリンダー氏が「私がミルトン H. エリクソン博士をモデリングしたとき、同博士のすべての局面をモデリングしたわけではなく、(意識的に選んだ) 限定された局面だけをモデリングしました」 と説明された点に、私は非常に興味を覚えました。

これは、私が常々主張してきている「DTI (深いトランス自己同一化)」による「自分のフィルターをすべて棚上げした全面的明け渡しを含蓄した、無意識的モデリング」とは一見矛盾するので、ワークショップ後に、グリンダー氏に「このような『選別的モデリング』は、バンドラー氏の方はどうだったのですか?」と質問したところ、「バンドラーも、同様に、エリクソンの限定された局面だけをモデリングした」という答えをいただきました。

この答えは、確かに、私にとっては意外な答えでしたが、しかし、グリンダー氏によると、初めからモデリングの対象から排除した局面は、たとえば、エリクソン博士の家族や女性との関係等だった、ということなので、内面的精神状態というよりは対外的人間関係を意味しているようなので、私が主張してきていることは、原則的には妥当性を保ち続けることができるようにも思えます。

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以上が、グリンダー氏の NLP 共同創創始者としての国内初のワークショップの概要報告と私のコメントでした。

なお、上記でも示唆しましたが、ワークショップ中に、グリンダー氏は、来年 5 月初めまたは夏に再度来日して、JMA を主催者として、数日間の NLP トレーナー向けコースを数日間開講される意志も公けに発表されました。

このコースについては、詳細が決定され次第、本メルマガ等を通じて発表して、正式に発表していきたいと思っていますが、このように継続的に日本に来られて、独特なベイツン式認識論的ワークを展開していただけることに関し、私は心からグリンダー氏に感謝の念を送りたいと思っています。

同氏の日本の NLP 業界への継続的な関与を通じて、日本の NLP 界が、内的にも対外的にも、ますます発展していくことを願っています。

作成 2023/10/27